弾丸東京
東京国立近代美術館で開催されていた「日本の家 1945年以降の建築と暮らし」展
行こう行こうと思いながら、ついに終わりを迎えてしまいそうだったので
国立新美術館で開催されている「安藤忠雄展ー挑戦ー」もあるし!ということで弾丸で見に行ってきました。
金曜日の午前の仕事終わり次第出発し、土曜の昼に東京を出て夕方には三重の現場に行くという予定で…^^;(金曜午前と土曜午後の仕事の間をぬって東京へ)
安藤忠雄展は、屋外で光の教会が1/1スケール(実物大)で再現されているのが話題になっていたので、天気の良い金曜に先に行こうと思い(雨の中も見たいところですが)調べたところ安藤氏のトークショーが予定されていたので、せっかくなら聴きたいと思い急いで向かいました。
直島での作品の展示
講演などを聴くのは4回目ぐらいかな?
いつも通り、さすが大阪!という話しの面白さで笑いが何度も起こっていました。
安藤建築といえばコンクリートの打ち放しが代名詞で、昨今の建築において省エネ/温熱環境に関心が高まっている中で真逆の「冬は極寒、夏は極暑」というかなり過酷な環境になる場合が多いと思います。
世間に名を広めた「住吉の長屋」も建物の中に渡り廊下があり、雨の日に二階の寝室からトイレへ行く際には傘をさして階段を降りていかなければなりません。
住まい手(住吉の長屋の住まい手かどうかは不明)とのやり取りで
「安藤さん、冬は寒くないの?大丈夫?」
「寒かったらシャツもう一枚着なはれ」
「それでも寒かったら?」
「もう一枚着たら宜しい」
「それでもダメだったら?」
「その時は諦めてください。人間諦めることも大事でっせ」
というやり取りは毎回の講演で笑いが起こる鉄板ネタです。笑
ただ、この話しは巨匠建築家のトンデモ話しのお笑いのネタでは無く、住まい手は実際に40年以上もこの住まいに住まわれています。
大変な環境ではあるかもしれませんが、狭小地で窓の向こうには隣地建物が迫り、薄暗く通風も期待出来ない状況になってしまいがちな条件の中、建物の真ん中1/3を中庭とすることで通風や採光を確保し、豊かな空間とすることを目指した間取りです。
安藤氏は施主がいまだにうまく住みこなしていることに驚いていると言い、「そろそろ中庭に屋根でもかけたら?」とすすめたことがあるが「もうここまで来たら住み続けます」と一蹴された。という話しもあるようです。
日本の家展でも錚々たる建築家の代表作が展示され、写真や模型や建築家や施主へのインタビュー動画が流れており、時間が許す限り見てきました。
一般的には「そんなところに柱が!?」と言われるような間取りの住宅に住んでいる施主インタビューでも「邪魔だと思ったことは一度もありません。建て替えるなんて一度も考えたことなんかありません」という答えでした。
これらの建物の住まい手に共通していることは、住まいに対してとても大きな愛着があるのではないでしょうか。
快適で一般的にみて不都合の少ない間取りをつくることは、経験を重ねれば実はそれほど難しいことでは無いのかもしれません。
それ以上に多少、もしかすると非常に大きい不都合な要素を打ち消してしまう程の魅力のある建物を設計することは難しく、住まい手との意思の疎通や考えの共有を図ることは、非常に熱量が必要な作業になると思います。
(敢えて不都合がある間取りにする必要もありませんし、今回見たケースは建築家が非常に著名になり建物自体も認められているという背景もありますが)
どちらの展示も内容が濃く、書きたいことはもっとあるのですが、取りあえずこの辺りで…
響きのある、美しく快適な棲家をつくっていきたいと強く思いました。