高断熱高気密の家で、夏にエアコン1台で全館空調すると電気代っていくら?③
28度設定のエアコンでは、暑くない…?
いえいえ、そんなことないんですよ!!
というお話しでした。理由を説明します。
ポイントは ①床・壁・天井の表面温度 と ②絶対湿度(前回の画像では12.82g)です。
これも話しだすと長くなるのでちょっっっとにしておきますが、
①床・壁・天井の表面温度
人間の体感温度は「(室温+床壁天井の表面温度)÷2」といわれています。
夏は屋根が熱せられて天井が熱いと
【天井全面がヒーターのように部屋を暖めながらエアコンで冷房している】ようなものです。
天井床壁を「目指したい室内温度」と「同じ温度表面温度」にすることが重要です。
(欲を言えば、室温より各表面温度を夏は少し冷やす、冬は少し暖める、ことが出来ると
輻射冷暖房の効果でより気持ち良いです。冬の床下エアコンや夏の冷水パネルなど)
②絶対湿度
絶対湿度とは空気中の水分量です。
よく海外で湿度が低い地域は気温が高くてもカラッとして暑く感じにくい、と言いますよね。
建物内の場合は、エアコンで除湿することでその状態に近くすることができます。
建築の温熱マニア達の間では「夏場に12g程度まで絶対湿度を下げるととても快適で過ごしやすくなる」と言われています。(ドイツのマニアが言い出したそうで)
外と比べると湿気がかなり少ないので室温を低くしすぎなくても暑く感じないのです。
①と②が体感温度に及ぼす影響を考えると
A.床壁天井が室温と同じ28度の部屋
B.空気の温度は24度で低くても、天井や壁がヒーターのように熱い部屋
AとBを比べてみると
体感温度はAの【室温28度の部屋】の方が低い場合が多いです。
しかも絶対湿度が低く、相対湿度が下がっていれば、
より一層涼しく感じます。
快適さは…?想像ができると思います。
ちなみに湿気に関して夏場の34度、湿度70%越え、だと絶対湿度は25g程になります。その場合の40坪程度の家には容積絶対湿度で計算すると9289.5gの水分が!
これを28度、湿度56%まで下げると5025.9gの水分まで減ります。その差、4.3L!建物内に4.3L分の水分撒き散らすって考えると凄くないですか?
ちなみにちなみに、換気等で外の湿気が入ったり人体からの放出や調理などでも湿気は室内で増えるので、この条件を維持しようと思ったら少しずつエアコンで
除湿させ続け1日の合計は、なんと約60L程の水分を取らなければいけません。(多少計算間違っているかもしれません(^^ゞ)
Special thanks「ケストレルのお供 by森こうすけ」
↑マニアックな内容なので読まなくても大丈夫です。笑
さて、このような内容を話させると小難しいことを延々と喋ってしまうので、
僕のそんな分かりにくい話しなんかよりも、実際に住んでみえる住まい手の感想を
聞かせていただくことができたので、ご紹介させてください。
今回の測定のお礼と、測定した結果をお知らせした際のやり取りです。
(掲載了承済)
高断熱高気密の住まいに住んでいる施主さんの感想
ー桂ー
「測定結果はこのような内容でした。
少しお聞きしたいのは、普段の住まい方の感覚として
「電気代を節約する為になるべく不要な時は切ろうとしている」のか
「特にそんな考えはなく必要な時は付けている、という感じ」なのかってどうです??
ー(綺麗な)奥様ー
「お疲れ様です!
あまり節約の為に切るということはなく、必要な時はつけてる感じです。
暑い日は、二階をつけっぱなしで出かけています。
一階は出かける時は切って出かけることが多いかな。
一階も二階も、つける時は基本27、8度設定でつけてます!」
ー桂ー
「貴重な情報をありがとうございますーm(_ _)m
ちなみに、うちの賃貸の夏の冷房費は今月で約5000円…
出かける際はエアコン切ってそれです。勿論帰ったら灼熱状態…
こちらの面積は18坪と半分以下。しかも基本リビングしか冷やさずに5000円…」
ー(優しい)奥様ー
「なるほど!さすがですね!
うち冬も気にせずつけっぱなしだったけど、最高でも電気代全部で2万ぐらいだった気がする。
ありがたいお家に住まわせてもらってます」
(昨年の電気代を見せてもらいましたが、オール電化で一番高い月がちょうど2万円ぐらいでした
24時間 床下エアコンで家全体を暖房し続けた状態。その月以外は同じく24時間暖房していても数千円低かった。
冬の方が空調費用は上がります。室内外の温度差が大きいので。冬版はまた報告しますね)
ー(ナイスガイな)ご主人ー
30度超えが続く日は上(2Fエアコン)は付けっ放しで、
基本的に30〜28度なら家の中はそんなに暑くないので、
応急処置的な感じで下(1Fエアコン)を付けるって感じです。
ただ、付けっ放しにして寝ると間違いなく冷え過ぎてしまうので、
付けたり消したりになります。
また、旅行等絶対家に帰らない日は全部消してますね^ ^
まぁ真冬でも普通にTシャツとかで過ごしてる時とかあるけどありえないっすよね笑
これは伺った際に度々聞いたのですが、
真夏の日に28度設定で付けっ放しにして寝ると
1Fの角、家族皆んなで寝ている畳の部屋でも寒くなるらしいです。
なのでエアコンを切ったり、畳の部屋の戸を締め切って
寒くならないようにして寝るという状況だと。
まさか2.8kwのエアコンで40坪強の家が寒くなるとは…
ご主人の話しであったように、男性陣は真冬でも室内では7分丈のTシャツに裸足。
ぐらいの格好で過ごしてみえます。奥さんは薄いカーディガン羽織ってるかな?
そんな温熱環境です。
エアコンの帖数設定について
ちなみに「2.8kw」というと、メーカーのHPをみると「10帖用」と出てきます。
2帖=1坪 なので、吹抜いれて42坪のこの建物は、
10帖用のエアコンで84畳分の空間を空調していることになりますね!笑
この「○○畳用」という数字は昭和に設定された数値を今でも使っているようです。
「しっかり断熱気密した家」には全くあてはまらない数字ですね。
容量の大きなエアコンは壁掛け1台でも20〜30万ほどしますし、
全館空調システムのようなものだと○○○万円したりします。
2.8kwのエアコンなら数万円で購入出来ますよ。
この空調の話し、この温熱環境は【断熱】【気密】【空調計画】…と
色々な要素を丁寧に設計/施工しないと実現はしません。
では、ちなみに【断熱/気密】にかかる費用っていくらぐらいだと思います??
高断熱/高気密 にかかる費用
これはどのような建物をベースに考えて、どのような建物を目指すのか
で全然違うので、一概には言えないのですが…
個人的な感覚だと、今新築で一般的に建てられている建物に5~60万円程度もプラスすれば
今回お話しした状況に近付けるのではないかな?と思います。
最近は吹き付けの発泡ウレタンを施工している会社が多いですが、ウレタンはそこそこ費用かかるので
うちが普段施工している高性能GWの裸品の方が、断熱材自体の費用はむしろ安くなりますし。
あと、換気や空調機器の機械関係にこだわりだすとかなり高額になったりしますが
僕は「躯体性能を最大化、機械設備は最小化」をモットーにしていますので
そこまで特別な設備は必要ないのでは、と思ったりします。
(特別な設備にしてしまうと、壊れた時に困りますし…)
住まいの中で【断熱気密性能】が最大のプライオリティを持つか、というと決してそうではなく
【暮らしの豊かさ】を求めて家づくりをする中の1つの要素でしかないという考えです。
でも、その要素(断熱/気密)は非常ーーに大事で、
住まい手の暮らしにダイレクトに、もの凄く影響を
与えるので、かなり力を入れます。これは譲れません。
【最優先】ではありませんが、【マスト(必須)】です。
ということで、断熱/気密/空調には意外とそんなに費用かからないんですよー。
ということを少しだけでもお伝えしたかったのです。
むしろ断熱材は一般的によく使われている断熱材より安価で性能が高いものがあるし、
空調機器(エアコン)は数も少なく、容量も小さくなるので初期投資がグンと安くなるし、
うまくいけば夏のエアコンはMAX月3,000円程度で24時間カラッと涼しいし。
冬は家中が一日中暖かい。寒くて布団から出れないことも無いし、夜中のトイレも暖かいです。
そして、
なんと、
断熱性能は壊れません!
エアコン等の機械は10年したら壊れます。
(メーカーも10年以上使ったらどうなっても知りませんよ、的なこと書いてますし)
○○○万円もする全館空調が10年ちょっとで壊れたら、交換するのも○○○万円…
もし、仮にお金はあったとしても、機械が廃盤で無くなっている場合もあります。
新しく交換したくても、モノがなくて交換出来ない!!
その場合はその機械はオブジェとして飾っておいて、各室に壁掛けエアコン。
なんて笑えない状況の建物は、実際にたくさん存在します。
でも、
それに引き換え
断熱性能は壊れません!!
しっかりと躯体性能が高い建物であれば、10年後にエアコンが壊れたとしても
10万するかしないかの壁掛けエアコンを「ポコっ」と交換。
作業時間は1~2時間で、その時の最新省エネ設備でパワーアップした気分になれます。笑
新築当時に何台もエアコンを付ける為の数十万円分、
断熱気密施工にかけてみたらどうでしょうか…?
家計に優しく、体に優しく、そして省エネということは地球環境にも優しいですよね。
持続可能な建物を建てて、持続可能な社会にしていきませんか。